まったく新しい作用機序の便秘薬が発売したので勉強がてらまとめてみることにします。普通のげ剤とのちがいはなんといってもオピオイドの便秘専用薬ってことです。
専用薬なのでオピオイド使ってない人がつかってもまったく意味ないのでそこは注意です。
・薬価基準収載コード:2359007F1020・有効成分:ナルデメジントシル酸塩 0.2mg
・販売製薬会社:塩野義製薬
・薬価:272.10
・薬価収載日:H29.5.24
スインプロイクってなんの薬ですか?
カテゴリー
経口末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
効能・効果
オピオイド誘発性便秘症
用法・用量
通常、成人にはナルデメジンとして1回0.2mgを1日1回経口投与する。
1日1錠なので1日薬価は272.1円ですね。まぁ、便秘薬にしては高いけど思ったほど高くない。ちょっと他の便秘薬と比較してみる。
リンゼス錠0.25mg/92.4
マグミット錠330mg/5.6
プルゼニド錠12mg/5.6
ラキソベロン錠2.5mg/8.6
リンゼス錠に関してはIBSの薬だからちょっと違うかもしれなけど、あくまでも価格比較の参考です。ちなみにリンゼスは1回2錠ですね。やっぱり昔からある薬はやすいです。1日5~6錠つかったとしても全然やすい。マグミット330が6錠で33.6円しかしません。
マグミットでも十分やすいんだけど、便秘薬に関しては粉薬にするともっと安くなります。マグミットが6錠だと成分量にして2000㎎の酸化マグネシウムなんだけど、重カマ「ヨシダ」にすると2gがマグミット6錠分のりょうです。なんと3円しかしません(笑)
だから、30日ぶんでも90円にしかならない。1割負担のジジババなら9円です(笑)
さてさて、話がそれましたがスインプロイクにもどして作用機序をみていく。
スインプロイクのインタビューフォーム抜粋
機序的なところはインタビューフォームを読んで下さい。抜粋しておきます。
開発の経緯は?(スインプロイク錠のインタビューフォームより)
オピオイド鎮痛薬は,主に中等度~高度の疼痛管理に広く用いられ,特にがん疼痛治療では中心的役割を果たしているが,多くの副作用が鎮痛効果達成や治療継続の障害となっている。
なかでも便秘はオピオイド鎮痛薬治療を受けている患者の40~80%に認められ,耐性が生じにくく,患者負担が大きいことから,オピオイド鎮痛薬による疼痛管理の妨げとなっているといわれている。オピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation:OIC)の治療薬の開発は,さまざまな医療現場の疼痛管理で重要なオピオイド鎮痛薬の有用性と受容性を高めるものと期待されていた。
オピオイド受容体にはμ,δ,κ受容体があり,モルヒネ,オキシコドン,フェンタニル,トラマドール等,多くのオピオイド鎮痛薬による鎮痛作用は主に中枢のμオピオイド受容体を介して発現する。便秘をはじめとする胃腸障害は,主に消化管に存在する末梢のμオピオイド受容体へのオピオイドの結合に起因し,消化管運動の抑制(筋緊張,蠕動運動の抑制,胃内容排出の抑制,消化管輸送の抑制),消化管神経活動の抑制(サブスタンス P やアセチルコリン放出の抑制)及びイオンや腸液分泌の減少等が複合的に起こり,その結果として固形便や排便障害,膨満感,腹痛等を伴う便秘が引き起こされると考えられている。
塩野義製薬株式会社では,これらのオピオイド鎮痛薬の薬理学的特性に基づき,オピオイド誘発性便秘症の治療薬の開発を開始した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛作用に影響を与えず,経口投与可能な便秘改善作用を有する化合物として,末梢のμオピオイド受容体拮抗薬を探索し,経口吸収性を保ちかつ血液脳関門の透過性を極めて低くした,末梢性μオピオイド受容体拮抗薬ナルデメジンが開発品として選定された。非臨床試験で,ナルデメジンは腸管でのオピオイドの消化管運動,消化管神経活動の抑制作用に対して強力な拮抗作用を有することにより便秘改善作用を示し,これらの作用を示す用量では中枢神経系を介するオピオイド鎮痛薬の鎮痛作用に影響する可能性は低いことが示された。
OIC を有する患者を対象に行った国内第Ⅲ相臨床試験(V9236)において,OIC に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたことから,2017 年 3 月に「オピオイド誘発性便秘症」を適応として承認された。なお,海外でも米国において 2017 年 3 月に「非がん性慢性疼痛成人患者でのオピオイド誘発性便秘症」を適応症として承認された。
名称由来
名称の由来 Control Symptoms of OIC
OICの症状をコントロールする薬でスインプロイクだそうです。OICはオピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation:OIC)のことですね。
オピオイドの便秘薬だからトラムセットやトラマールにもつかえるの?
開発の経緯の話で「オピオイド受容体にはμ,δ,κ受容体があり,モルヒネ,オキシコドン,フェンタニル,トラマドール等,多くのオピオイド鎮痛薬による鎮痛作用は主に中枢のμオピオイド受容体を介して発現する。」ってトラマドールもちゃんとオピオイド系に入れてくれてますよね。
実際、オピオイド系だし。
トラマドール配合の薬は、麻薬カテゴリーから外れてるから、わりと使われてますよね。だから、スインプロイク錠は麻薬専用の便秘薬って認識は違いますよね。
トラマドール配合の薬といえば、トラムセット・ワントラム・トラマールですね。整形でもよくつかうからこれに付随してスインプロイクも使われるかもしれませんね。
ただ、1錠272.1円は便秘薬としては躊躇しますよね。3割負担で1日100円くらいだから、月にして3000円プラスはきついですよね。まずは塩類下剤や刺激性下剤でようすみになりそう。
食事の影響はあるけど食前食後どちらでもOK
用法・用量
通常,成人にはナルデメジンとして1回0.2mgを1日1回経口投与する。
用法では食前食後の指定はないけど、食事の影響をうけるくすりのようですね。
単回投与(添付文書より)
健康成人男女に,0.2mgを空腹時(15例)又は食後(高脂肪食)(18例)に単回経口投与したときのナルデメジンの薬物動態パラメータを表1に,平均血漿中濃度推移を図1に示す。空腹時投与と比べ食後投与でCmaxは35%減少したが,AUCはほぼ同様の値であった。Tmaxは空腹時の0.75時間から2.50時間に遅延した。食事摂取による吸収の遅延が示唆されたが,吸収量への影響は認められなかった2)。(外国人によるデータ)
結果としてAUCは同等だから食前食後でもどっちでもTmaxは空腹時の0.75時間から2.50時間に遅延なのでずいぶんと違いますよね。便秘薬は早く効けばいいってものでもないし、AUCが同じならいいのかな。
副作用で最も多いものは下痢
便秘につかうのだから、当然想定されるケースです。ただ、作用機序を考えると、腸を刺激するわけではない。オピオイドの便秘作用をブロックするだけだから、積極的に下痢を起こすことはない。
でも、下痢が多いのは、オピオイドで便秘している人は普段から他の下剤を使っている人が大多数なので、それでオピオイドの便秘作用をブロックしたら、今度は普段飲んでる下剤の効果だけが目立ってしまって下痢してしまうのです。
対処法は簡単で、普段飲んでる下剤を減らせばOK。
服薬指導時の注意
オピオイド専用の便秘薬なので、通常の便秘などでは効果が期待できない。薬を人にあげてしまう人多いのでここをしっかり説明しておかないとね。