意識低い系薬剤師の転職紀行

安寧の場所を求めて3年ごとに転職を繰り返す意識低い系薬剤師。管理薬剤師になりたくない万年勤務薬剤師。やる気はないけど薬は好き。

新人薬剤師に医薬品の歴史を教えようと思った

投稿日:2015年7月17日 更新日:

新人薬剤師さんの教育係に任命されたので、ちょっと教育ネタを考えてみようと思う。

医薬品の作用機序とかは学校でたくさん習ったと思うから、学校では教えてくれない医薬品が発売された順番とか発売された時のセールスポイントとかの歴史を教えてあげようと思う。

医薬品の歴史といっても、残念ながらまだ私の調剤薬局歴は5、6年しかないから、過去5年間くらいの歴史というペラペラな内容でお届けします。

たとえば、ニューキノロン系の目薬に「タリビッド点眼」「クラビット点眼」というのがありますが、新人さんからするとどちらも同じニューキノロン系という抗生剤の点眼薬という認識しかありません。

それもそのはず、医薬品添付文書の効能効果とか薬理薬効だとかを見比べてみてもその違いは書いてない。

でも、発売された経緯を知っている薬剤師なら、この違いは常識ですよね?

タリビッドの方が古くからあって、それを改良してもっと効くようになったよってことで発売したのがクラビットです。つまり、クラビットはタリビッドの改良版ですね。

もうちょっと詳しく説明すると、タリビッド(オフロキサシン)はRとSの光学異性体が混ざってる物質なんだけど、この中でRの方が良く効くからこっちだけを取り出したらより強力な抗生剤になるはずってことで、R体だけとりだしたのが、クラビット(レボフロキサシン)です。

さて、こんな感じで思いつくものを順番に書き足していこうと思う。

タリビッド錠とクラビット錠について

さっきはタリビッド点眼とクラビット点眼について説明しましたが、こんどは錠剤です。

錠剤も同じです。タリビッド錠100が発売したあとクラビット錠100が発売して、クラビットの方が強力という扱いがされていますね。

さて、新人さんは見たことないと思うけど、クラビット錠には100mgって規格があったんです。でも、もう発売中止でお目にかかることはないです。その名残としてジェネリックでレボフロキサシン錠100ってのはまだ発売されていますね。

では、どうして100mgがなくなってしまったのかです。

いまはご存知クラビット錠500ですね。

昔は100mgを1日3回で300mgが普通だったんだけど、この500が発売されたときから500mgを1日1回が主流になりました。昔の100mg錠でいうと、1回5錠を1日1回いっきのみと同じことになりますね。当時は、この変化を受け入れることができずに100mg×3回がしばらくつづいてましたが、しばらくして、100mgは製造中止になってしまいました。

それでも500mg一気飲みに抵抗がある医者はレボフロキサシン100を使用してしぶとく100mgをしようしていました。レセコンでは発売中止したからクラビット100錠は入力できないんだけど、手描きにしてしぶとく出そうとする医者もいましたね。問合せたら説得虚しく100mg×3回でだせっていわれてジェネリック取り寄せた覚えがあります。

【新薬】ニューキノロン系抗菌薬 レボフロキサシン水和物 クラビット:PK-PD理論に基づく高用量製剤登場へ

この記事が公開されたのが2009/5/15だから6年前の話ですね。

ザイロリック錠→フェブリク錠→トピロリック錠・ウリアデック錠

たいした衝撃は走らなかったけど、発売されたのは上記の順番です。ザイロリックは古くからある薬ですね。キサンチンオキシダーゼ阻害薬で尿酸合成を阻害して、尿酸値を下げてくれます。で、このキサンチンオキシダーゼ阻害薬が長いことザイロリック(アロプリノール錠)しかなかったんだけど、その牙城を崩すべく発売されたのがフェブリクです。

あとから発売したもののほうがだいたい高性能ですよね。アロプリノールは通常1日2回ですが、新しく登場したフェブリクはなんと1日1回でいいのです。血圧や糖尿病の薬もいまは1日1回のものが多いので1日1回タイプはやっぱり重宝されます。

【新薬】フェブキソスタット フェブリク:日本発、1日1回型の尿酸生成抑制薬

そのあとに発売されたのがトピロリック錠、ウリアデック錠ですが、これはほとんど話題になりませんでした。実は、わたしはまだこの2つをお目にかかたことありません。あとから発売したから何かしらのメリットはあるのだろうけど、触ったことない薬だからわかりません。ということで、詳しくはこちら。

【新薬】ウリアデック錠、トピロリック錠(高尿酸血症治療薬) トピロキソスタット:2成分目の選択的XOD阻害薬 リリカちゃん登場

リリカカプセル登場で慢性疼痛へのアプローチが多様化

リリカちゃんはいままでにない作用機序の薬だったから爆発的にヒットしましたね。原因不明の痛みで悩まされている人は多く、これが登場してようやく効き目が実感できたってはなしは何度か聞いた。

このリリカが登場するまでよく使用されていたのがNSAIDSとノイロトロピンですね。NSAIDSは長期服用だと胃腸障害が心配だし、NSAIDSが効かない疼痛もおおいんですよね。ノイロトロピンは1日4錠、分2って使い方についてよく疑義してました。1回1錠とか、毎食後2錠とかね。最近では、ノイロトロピンを見かける機会がめっきりなくなりました。リリカにとってかわったのかもしれない。

こんな感じで慢性疼痛に関しては薬剤の選択肢があんまりなかったから、リリカちゃんは発売前からすごい話題になってました。で、発売したあと2週間の投薬制限があるにもかかわらずスゴイ売上だったそうです。

リリカちゃん発売と同時期くらいにトラマールやトラムセットとかでてきて、いまではいろいろ痛みに対してアプローチできるようになった。

そういえば、リリカは発売当初勉強会やってもらいました。

眠気ふらつきの副作用がわりかし多い。だから、飲み始めるときは朝と晩で処方されてたら、晩から飲むように指導する。増量するときもそう。朝と晩ででてたら増量は晩からするように指導する。

これくらいしか覚えてない(笑)

DPP-4阻害薬(ジャヌビアとグラクティブ)登場で糖尿病治療が一変

これはスゴイね。もう、いまはDPP4阻害薬なしの時代には戻れないでしょう。いまでこそDPP4阻害薬ばっかりでるけど、これが使われ始めたのは最近です。それまでアマリールとかアクトスとかメルビンとかめっちゃ出てました。

ちなみに、アクトスは膀胱がんのリスクが上がるかもしれないって新聞に大々的にとりあげられてから処方が圧倒的にすくなくなった。メルビンはいまはなき薬です。メトグルコに名称変更してさらに高用量で使えるようになった。

DPP-4阻害薬って一番最初に発売されたのがジャヌビアとグラクティブです。これは同時に発売されて全く同じ成分でメーカーが違うだけのいわゆる併売品です。どちらも規格が多いので両方共そろえると大変です。で、この2つを皮切りにいまでは7種類もあります。もしかするとこれからもっと増えるかもしれませんね。

ジャヌビア&グラクティブ→エクア→ネシーナ→トラゼンタ→テネリア→スイニー→オングリザ

たぶん発売順はこれで合ってると思う。いっぱいあるけど使い分けはぶっちゃけわからない。これは調べてみると面白いかもしれないですね。医薬品の発売スピードが早過ぎてサボってるうちに置いてかれてしまいました。

睡眠薬の選択肢が増えた

ちょっと前まで睡眠薬の選択肢って、超短時間型、短時間型、長時間型とか時間による使い分けがほとんどだったんだけどロゼレムの登場で選択肢が増えました。

ロゼレムはメラトニン受容体作動薬です。体内時計を調節するといういままでになかった新しい作用機序の薬として売りだされました。で、最近またベルソムラとかいうオレキシン受容体拮抗薬なるものが登場してこれもまた全くの新しい作用機序で、不眠に対してさらなる選択肢が増えた。

血液サラサラ(抗凝固薬)の薬といえばワーファリンだった

抗凝固薬と言えばワーファリンでTDMだの納豆だの飲み合わせだの、服用する錠数が多いだのとちょっと手間のかかる薬だったんだけど、まだ現役バリバリの薬だけど、ちょっと前に比べるとだいぶ処方が減りました。というのも、新しいタイプの血液サラサラの薬がたくさん出たからです。

まずはプラザキサカプセル(直接トロンビン阻害剤)がでてこれはもう衝撃ですよね。ワーファリンみたいに細かい調節がいらずに、さらに納豆も気にしなくていいというではないですか。期待の超新星だったんだけど途中でブルーレターがでてしまって勢いは衰えましたね。腎機能障害には注意が必要。

あと、リクシアナ(経口FXa阻害剤)とかエリキュース(経口FXa阻害剤)とかイグザレルト(選択的直接作用型第Xa因子阻害剤)とかも新しいタイプの薬ですね。発売された順番はわすれましたがどれも同じような時期に発売されたと思います。

ワンアルファからエディロールへ

ビタミンDといえばもうワンアルファもしくはジェネリックだったんだけど、これよりももっと効き目があるよってことで発売されたのがエディロールカプセル(活性型ビタミンD3製剤)。

値段はワンアルファよりもちょっと高いくらいでべらぼうに高いということはないのだが、ワンアルファはジェネリックにするとものすごく安くなる。ジェネリック希望の人がエディロールにすると値段が上がりますね。参考までにワンアルファ0.5は40円/錠くらいだけど、カルフィーナ0.5にすると6円/錠くらいです。

クラバモックスの登場でペニシリン系の注目度UP

クラバモックスは高用量のアモキシシリンとクランブラン酸カリウムとの合剤。アモキシシリンは古くからある抗生剤でサワシリンやパセトシンです。これって従来は1日20~40mg/kgが目安だったんだけど、クラバモックスはなんと約3倍である1日90mg/kgで設定されている。これの登場をうけてサワシリンやパセトシンも最大1日90mg/kgまでという用法が追加になった。このクラバモックス発売をうけて高用量のアモキシシリンが一般化したけど、それ以前にも勉強熱心な医師は高用量アモキシシリンを処方することがあって、以前は添付文書にない使い方だったので現場では過量投与ではないかと疑義したものです。

あとコレと同じような感じでオーグメンチンもかわった使い方するようになった。オーグメンチンはクラバモックスと同じ成分の合剤です。オーグメンチンだとアモキシシリンの量が少ないので高用量で使いたいときにはサワシリンやパセトシンと一緒に処方されることがある。

オーグメンチンにパセトシンやサワシリンを併用する理由は!?

その他もろもろ

思いつく限り書き続けようと思ったけど、疲れたのでこのへんで一旦ストップします。

時間ができたらアミティーザ、ゼチーア、ラジレス、アジルバ、ロトリガ、ザイザルこの辺を書いてみたいと思う。

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