みんな大好きヒルドイドがリニューアルします。といってもヒルドイドクリームの方ですけどね。
ヒルドイドクリームといわれてピンクのチューブを想像した人はそれ間違いです。あれもクリームっぽいけど正式名称はヒルドイドソフト軟膏です。
画像で比較するとこんな感じです。ピンクのチューブは有名ですが、赤い方のチューブはあんまり見たことないんじゃないでしょうか?
ヒルドイドソフト軟膏
ヒルドイドクリーム
効能効果は同じなのでどちらも保湿剤として使用することができます。用途は同じでどっちもクリームなんだけど、ヒルドイドクリームがいまいち人気がない理由はズバリ「ニオイ」にあります。
ヒルドイドクリームってめっちゃ臭いんです。ガソリン系もしくは石油系の臭いが強烈にします。あんなもの顔に塗ったら一日中鼻が臭くてたまりません。
足だったら鼻から距離あるから足の保湿にはいいかもしれないけど、無理して使わなくても臭くない「ヒルドイドソフト軟膏」があるからそっち使いますよね。
においの原因となるのは有効成分ではなく添加剤の「チモール」が原因です。添加剤を変更してニオイが改善できるなら、もっとはやればよかったのに。ジェネリックのビーソフテンクリームは「チモール」入ってないから臭くないので、ヒルドイドクリーム処方きたら迷わずビーソフテンクリームをおすすめします。
個人的にはチモール入ってたほうが「臭い」を回避できるという理由でジェネリックに変更できるので、そのままで全然かまわないんだけど。
マルホはこの変更されると困るから対策することにしたんでしょうね。今回はヒルドイドクリームのリニューアルとヒルドイドソフト軟膏について説明していきます。
目次
ヒルドイドクリームの変更点
変更点
- 添加物のチモール臭がしなくなった
- アルミチューブからポリエチレン樹脂チューブに変更
- 1本20gから25gと50gチューブに用量変更
添加剤のチモールってヒルドイドクリームのこだわりだと思っていたんですが切り捨てても良いポイントだったんですね。
ヒルドクリームってめったにでないのにチューブがアルミチューブなので少しぶつけて変形してしまうと修復することができない。1~2年前のヒルドイドクリームはだいたいボコボコです。
それにたいしてヒルドイドソフト軟膏のチューブはプニプニして押しても元にもどります。ボコボコになる心配は皆無です。
なんでいままで統一しなかったのかが不思議です。とにかく、いままでのヒルドイドクリームの扱いが雑すぎるんです。たぶん、ソフト軟膏つくったからクリーム切り捨てるつもりだったのが、意外と残っちゃったからうまいことリニューアルして再活用しようって魂胆でしょう。
もっともウザいのがチューブの用量変更です。これが今回のナンバーワンクソ変更ポイントです。ヒルドイドクリームを医師は「g」で処方してきます。医師が「25g」単位で処方してきたら、薬局に残った20g包装どうするの?
もう「20gチューブ」+「5g壺」で患者に渡すしかない。もしくは疑義照会して処方料を直してもらうけど、どちらにせよ手間ですね。
ちなみにヒルドイドクリームは1本506円だから気軽にポイポイと捨てていいようなものではない。
ヒルドイド製品の処方数量ランキング
大好きな第2回NDBオープンデータで処方量をチェックします。
- ヒルドイドソフト軟膏:8.5億g
- ヒルドイドローション:6.3億g
- ビーソフテンローション:2.4億g
- ヒルドイドクリーム:0.46億g
ヒルドイドクリームとヒルドイドソフト軟膏を比較してみると18.5倍も違いますね。ほとんど保湿剤目的で使うからヒルドイドゲルはランキング外です。ゲルは保湿剤にならないですからね。
美容目的使用のせいで「ヒルドイドソフト軟膏」の売上がハンパない。院外8.5億gと院内1.5億gで合計で年間10億gも使用されています。ヒルドイドは1g25.3円なので金額に治すと253億円分のヒルドイドソフト軟膏だけで売り上げている計算になります。
しかも、これ2015年のデータなので最近はヒルドイドがネットで「コスパと保湿で最強の保湿クリーム」みたいにとりあつかわれていて、欲しがる人がたくさんいる。きっとますます増えていきそうで社会保障費圧迫の悩みのタネですね。
2015年で院外処方で処方されたヘパリン類似物質製剤の処方量ランキングです。
商品名 | 処方量(g) | 薬価 |
---|---|---|
ヒルドイドソフト軟膏0.3% | 855,229,637 | 25.3 |
ヒルドイドローション0.3% | 632,457,588 | 25.3 |
ビーソフテンローション0.3% | 248,583,398 | 10.1 |
ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「日医工」 | 148,007,223 | 10.1 |
ビーソフテン油性クリーム0.3% | 129,351,118 | 10.1 |
ビーソフテンクリーム0.3% | 118,128,096 | 10.1 |
ヒルドイドクリーム0.3% | 46,008,766 | 25.3 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「日医工」 | 43,232,860 | 18.7 |
ビーソフテン外用スプレー0.3% | 38,788,499 | 18.7 |
ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「ニプロ」 | 25,606,410 | 7.2 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「サトウ」 | 17,347,769 | 18.7 |
ヘパリン類似物質ローション0.3%「YD」 | 5,716,263 | 10.1 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「PP」 | 4,858,691 | 18.7 |
ヘパリン類似物質ローション0.3%「ニプロ」 | 3,646,910 | 7.2 |
ヘパリン類似物質ローション0.3%「ラクール」 | 3,470,962 | 7.2 |
ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「アメル」 | 2,585,687 | 10.1 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ファイザー」 | 2,326,732 | 18.7 |
ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「ニットー」 | 1,717,310 | 7.2 |
ヘパリン類似物質クリーム0.3%「YD」 | 1,536,699 | 10.1 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ニプロ」 | 1,407,605 | 18.7 |
ヘパリン類似物質クリーム0.3%「アメル」 | 1,238,002 | 10.1 |
ヘパリン類似物質クリーム0.3%「ラクール」 | 1,002,915 | 7.2 |
エアリートローション0.3% | 964,256 | 7.2 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「YD」 | 919,734 | 18.7 |
ヘパリンZ軟膏500単位/g | 389,473 | 13.4 |
ヘパリン類似物質クリーム0.3%「SN」 | 339,101 | 7.2 |
エアリートクリーム0.3% | 226,892 | 7.2 |
ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ニットー」 | 197,450 | 18.7 |
セレロイズ軟膏0.3% | 134,021 | 7.2 |
先発品がぶっちぎりの1位ですね。後発品は薬価が1/3~1/2とかなり安くなるので変更するメリットは大きい。「PP」とかポーラファルマだからオススメです。
ヒルドイドクリームとヒルドイドソフト軟膏の違い
クリームは水と油を界面活性剤という接着剤のようなもので分離しないように混ぜ合わせたものなのですが、クリームにも「油ベースのクリーム」と「水ベースのクリーム」と2パターンあります
ヒルドイドクリームのイメージは、水の中に油が小さな粒になって混ざっている状態です。水中油型(O/W型クリーム)といいます。ヒルドイドソフト軟膏は油のなかに水が小さな粒になって混ざっている状態です。これを油中水型(W/O型クリーム)といいます。
ヒルドイドソフト軟膏 → 油中水型(W/O型クリーム)
ヒルドイドクリーム → 水中油型(O/W型クリーム)
ヒルドイドソフト軟膏
ヒルドイドクリーム
油ベースの方が低刺激で、保湿効果も高いのですが、ベタついて洗い流しにくいというデメリットもあります。ただヒルドイドの使用目的がほとんど「保湿」ということを考えると、保湿効果が高い油中水型(W/O型クリーム)が好まれます。そういうわけでヒルドイドクリームよりもヒルドイドソフト軟膏の方が18倍も多く処方されています。
いままでヒルドイドクリームが臭かったから使われなかったって理由の方がおおきいとは思いますけどね。
さっぱり・こってりの相関表と例
←さっぱり | こってり→ | |||
溶液性ローション | 乳液性ローション | 水中油型(O/W型クリーム) | 油中水型(W/O型クリーム) | 油脂性軟膏 |
ビーソフテンローション | ヒルドイドローション | ヒルドイドクリーム | ヒルドイドソフト軟膏 | プロペト |
ヒルドイドローションのジェネリック医薬品であるビーソフテンローションはみためからしてぜんぜん違うでしょ。有効成分は同じだけど添加剤(基剤)が違うというのがジェネリック医薬品のデメリットでありメリットでもあります。
添加剤の違いを活かしてヒルドイドローション(乳液性ローション)を溶液性ローションの添加剤に変更したものがビーソフテンローションですね。もうこればバカ売れです。さっぱりつかえる保湿剤とかいう意味わかんないカテゴリーを生み出しました。先発品にない付加価値をうみだしたスーパージェネリック医薬品としてビーソフテンローションは先発と同等の地位を築き上げました。
使い分けのすごくわかりやすい図がマルホにあったので借りてきました。リンクも貼ってあるのでオリジナルを確認したい人はどうぞ。
効能効果の違い
ヒルドイドクリーム | 血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期) |
ヒルドイドソフト軟膏 | 血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期) |
ヒルドイドローション | 血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期) |
ヒルドイドゲル | 外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、血栓性静脈炎、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、筋性斜頸(乳児期) |
保湿剤として使用するときは「皮脂欠乏症」って病名で使用します。クリーム・ソフト軟膏・ローションはすべて同じ効能効果です。
ゲルをみてみると「皮脂欠乏症」が入ってないので保湿剤として使用することはできません。ゲルを使用するのはおもに整形外科領域になりそうですが、マイナーすぎてほとんど使われることはありません。NDBオープンデータでもランキング外でしたからね。
添加剤の違い
ヒルドイドクリーム | グリセリン、ステアリン酸、水酸化カリウム、白色ワセリン、ラノリンアルコール、セトステアリルアルコール、セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物、ミリスチルアルコール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、イソプロパノール |
ヒルドイドソフト軟膏 | グリセリン、スクワラン、軽質流動パラフィン、セレシン、白色ワセリン、サラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル |
ヒルドイドローション | グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、セタノール、還元ラノリン、セトマクロゴール1000、モノステアリン酸グリセリン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミン |
ヒルドイドゲル | イソプロパノール、プロピレングリコール、トリイソプロパノールアミン、カルボキシビニルポリマー、香料 性状 |
ぶっちゃけ添加剤から読み取れることはない。ヒルドイドクリームの現在の添加剤には「チモール」がなくなったので、ニオイがなくなりました。
ヒルドイドと同じヘパリン類似物質0.3%配合の市販薬
市販薬にも剤形がいろいろありますね。
まずはクリームタイプ▼
ローションタイプももちろんあります▼
さらさら透明液体タイプもあります▼
傷跡をターゲットにしたアットノンはジェルタイプのヘパリン類似物質▼
痒み止めを配合したヘパリン類似物質クリームもあります。痒み止めとしてジフェンヒドラミン・クロタミトンが配合▼
ヘパリン類似物質はヒルドイドで認知度がアップしたから市販の製剤でもいろなん商品が発売されましたね。