ホクナリンテープって二つのメーカーが同じ名前で同じ商品を販売しているのですが「マルホ」のホクナリンテープが販売終了して「マイラン」のホクナリンテープだけになるそうです。
一つの商品を二つのメーカーがだすとか在庫して販売する側としては迷惑でしかありません。薬局はどちらかのメーカーだけを採用しますが、卸は両方とも在庫しないといけないから大変ですね。
これでスッキリして喜ばしい限りです。
目次
ホクナリンテープの「マイラン」と「マルホ」の違い
中身や効き目はどちらも同じものなのですがパッケージのデザインだけが違います。患者に渡すシートのデザインも違うのでいちいち説明するのがめんどくさいです。
致命的なのが色が違うことですね。ホクナリンテープのミリ数って色で認識しているからその色が変わるのがわずらわしい。
ホクナリンテープ各社の製剤見本画像

ホクナリンテープ「マルホ」

ホクナリンテープ「マイラン」
デザインはマルホの方が気に入っていたのでなくなるは残念。以前は、マルホとアボットの併売だったのですがアボットがいつの間にかマイランに販売移管して、そしてマルホはホクナリンテープを手放してマイランのみに一本化されます。
医薬品業界の商品の変動が激しいからなかなかおぼえられません。
さて、せっかくなのでホクナリンテープについていろいろと調べてみようと思います。
ホクナリンテープとジェネリックについて色々
薬価比較(1枚当たりの薬価)
商品名 | 0.5mg | 1mg | 2mg |
ホクナリンテープ | 38.9 | 53.2 | 73.8 |
ツロブテロールテープ「ファイザー」 | 18.1 | 25.3 | 35.9 |
ホクナリンテープのジェネリック医薬品はツロブテロールテープです。発売しているメーカーが複数ありそれぞれで薬価がちがうので代表して個人的にすきな「ファイザー」のものを表にまとめました。
ジェネリックにするとだいたい先発の半額になりますが、0.5mgや1mgは子どもなので会計がかからないことが多いですね。2mgは大人用なので変更するとだいぶ安くなります。
ジェネリックって先発品と効き目は同じって言うのですが、ことホクナリンテープに関してはちょっと微妙な部分があります。というのも、ホクナリンテープの特徴はなんといっても効き目が長いことです。
1日1枚の貼付で24時間安定して薬物を放出し続けます。安定して薬物を放出するために製剤的な工夫があって、それが「結晶レジボアシステム」です。この製剤工夫には特許があってジェネリックではまねできない技術なんです。
テープに結晶をとじこめて結晶が徐々に薬物を放出します。普通のテープでは薬物が放出されるにつれてテープないの有効成分濃度が下がってしまうので効き目がだんだん低下してしまいます。
また皮膚のうすい「老人・乳幼児・アトピー性皮膚炎の患者など」は皮膚がうすいので薬物が健常者よりも吸収されやすい。そうすると速いスピードで薬剤が吸収されるので副作用がでやすくなります。早く吸収されるとテープ内の薬物が枯渇するスピードも速くなるので24時間安定した効果がえられないおそれもある。
ジェネリック医薬品って有効成分が先発品と同じ濃度で体内で推移することを確認する試験が行われます。いわゆる”生物同等性試験”ですが、実は、この試験は健常者でしか行われず、高齢者やアトピー患者が使用した時に同等性を保証するものではないことを留意して欲しい。
メーカーがホクナリンテープの専用サイト設置して「結晶レジボアシステム」を画像で超わかりやすく解説しているので気になる人はみてみてください。参照:作用のしくみ | ホクナリンテープのご紹介(マイラン)
ホクナリンテープ(ツロブテロールテープ)の使い方
作用機序は有効成分(ツロブテロール)が皮膚から吸収されて、皮膚の下にある血管に入り、血液の流れで気管支まで運ばれることで、気管支を広げる働きをします。
一般の人だと皮膚から吸収されて血管にはいっていくという発想がそもそもないので驚かれることがしばしばあるし、予想だにしないことを言われることもある。「気管支を広げるならのどに貼らなくていいの?」とか、「胸に貼って成分が揮発して吸うことで効果がでてくる」と思ってたとか、薬剤師からすると突拍子もない発想なんだけど、まじめに言われるとこともしばしばありです。
適応の疾患
気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎
ぶっちゃけ、咳につかいますよね。個人的にもすごくすきな製品です。子どもの風邪のときにはホクナリンテープを率先して使います。
子どもの咳止めって慎重に使うべきで、最近の話題ではリン酸コデイン(通称:リンコデ)が小児に禁忌になったのでつかえなくなりました。デキストロメトルファンはまだ使えるけどリンコデ禁忌なんだからデキストロメトルファンもいまいちですよね。
咳を止めちゃうと痰の切れが悪くなってしまうからムコダイン・ムコソルバン・ビソルボンとか併用してつかうけど、こんなの使ってごまかしながら咳止めつかうくらいなら咳止め使わない方がましって思ってしまう。
だから、子供には鎮咳去痰薬っていって去痰作用もある咳止めであるアスベリンがよくつかわれるんです。
せき止めると風邪の治りが悪くなるリスクがあるので、ホクナリンテープみたいに気管支を広げて呼吸を楽にしてやるという発想がすき。とくに寝てるときは気道が狭くなって咳がでやすくなって、咳出ると熟睡できなくて辛い。そういうのを和らげてくれるのはありがたい。
貼る場所
胸部・背部・上腕部のいずれかに貼付できます。この3か所ならどこに貼っても効き目は同じとされているので、心臓に近いとこに貼ったからといって、よく効くわけではない。
効き始めるまでの時間
喘息の発作がおきたからといって急いで貼ってもすぐに効くわけではないので注意。発作起きたら吸入薬が即効性があるので一般的です。ホクナリンテープの場合は、有効成分は徐々に放出されるから急行血中濃度まで上がるのに時間がかかります。しっかりと効き目がでるまでには4時間ほどかかります。寝てるときに咳がひどくなるひとは寝る前に貼るのではなくもっと早めに貼っておくといいでしょう。
貼れる年齢と体重換算
上記の表でホクナリンテープには3種類ありますが、これは年齢によって使い分けられます。0.5~3歳未満で0.5mg、3~9歳未満で1mg、9歳以上で2mgです。あくまでも目安なのであとは体重や既往歴や併用薬なんかを考慮して量を決定します。
各年齢における平均体重を目安にてるので0.5~3歳未満は体重15㎏未満で、3歳~9歳未満は体重15~30kg未満、9歳以上は体重30kg以上がモデルケースになります。
目安はわりますが正確に体重換算したいときはどうしましょうか?マルホのサイトのQ&Aで回答されていました。
Q小児投与量は、体重当たり(㎎/㎏)に換算するとどの位ですか?
A管支喘息患児を対象にホクナリンテープの至適用量を検討した結果、至適用量は約50μg/㎏であると推察されました。小児の各年齢における平均体重を目安に、体重15㎏未満(0.5~3歳未満)には0.5㎎、体重15~30kg未満(3歳~9歳未満)には1mg、体重30kg以上(9歳以上)には2㎎で臨床効果が期待できると考えられます。
製剤について | FAQ | 医療関係者向けホクナリンテープ
プールやお風呂でははがした方がいいのか?
はがさずに入っても大丈夫です。ただ、剥がれやすくはなるので絆創膏などで固定したほうがいいです。お風呂にはそのまま入れるけど、やっぱりお風呂前に剥がして、お風呂後に貼るっていうローテーションが一番いいのではないでしょうか。
我が家はお風呂に入ってから裸になってはじめて貼っていることに気づくので、とりあえずお風呂の壁に剥がしたテープを張り付けますが、その後捨てるのをわすれて翌日同じことを繰り返すため、風邪をひいているときの浴室内は使用済みホクナリンテープだらけです。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)の副作用
ツロブテロールは皮膚から吸収されて体内に入ってから気管支を広げてくれます。都合良く気管支にだけ効けばいいのですが、思うように効かずに他のところでも作用がでてしまうことがある。それが副作用となってあらわれます。
起こりえる可能性が高いものとしては、心悸亢進(動悸)や振戦などがあります。ドキドキしたり手に震えがでたりしたときは薬が効きすぎている恐れがありますので減薬や中止を考慮して医師に相談しましょう。
添付文書より
0.1~5%未満
心悸亢進
0.1~5%未満
振戦、頭痛、不眠
市販薬で同じものはあるのか?
これ市販薬にあると便利なんだけど、残念ながら「処方箋専用薬」ですね。気管支拡張剤はさきほど説明している心悸亢進(動悸)や振戦のリスクから市販薬は見送られてます。年齢ごとで使い分けないといけないしね。
ただ、リンコデよりは全然ましだと思いますけどね、リンコデって死ぬほど使われたのちに禁忌指定はいりましたからね。あれに比べれば禁忌じゃないだけで1000倍つかいやすい。