ロヒプノールが販売中止になってサイレース錠に一本化されます。ロヒプノールはめちゃくちゃ出る薬だから衝撃ですね。精神科で処方されている人は薬にこだわりがある人が多いので、きっと薬の名前が変わるだけでも嫌がる人はおおいはずです。
ついでに、グッドミン錠もさよならバイバイするので別記事でまとめます。>グッドミン錠が販売中止してブロチゾラム錠になる理由
ロヒプノール錠とサイレース錠は名前が違うだけで中身はまったく同じです。どちらも「エーザイ」がだしてます。
ホントなにやってんのエーザイは?そりゃ片方なくした方が効率的だわ。販売を中止するのは「ロヒプノール錠1」「ロヒプノール錠2」「ロヒプノール静注用2」の3製品です。
代替薬は先発品なら「サイレース錠」でジェネリック医薬品なら「フルニトラゼパム錠」ですね。
「ロヒプノール」と「サイレース」って同じエーザイがだしているにもかかわらず薬価が違います。
安い方の「ロヒプノール」を削除して「サイレース」を残すのはメーカーとしては当然ですが患者側からすると腑に落ちないところです。
ジェネリックと先発品で薬価差が大きいのでこの機会に「さよならエーザイ」してジェネリックを使ってみるのもいいとおもう。薬価は▼参照下さい。(2017/09/26現在)

かんじゃの薬箱より
販売中止は衝撃だったけど、先発の併売は迷惑でしかないのでこれで一つ解消されることは喜ばしいことです。シングレア・キプレス錠やノルバスク・アムロジンとこの辺りも整理してくれるとありがたい。
目次
販売中止時期
まだ事前案内で公式案内は先になるのですが予定では以下の期間になるそうです。
販売中止時期:2018年8月
経過措置期間:2019年3月まで
販売中止したら卸に在庫なくなり次第終了ですね。
販売中止理由
エーザイが同じ商品を違う商標名で売っているので、一つはもう存在意義なし、お役目御免にて商品整理ですね。サイレースを残した理由は、サイレースがもともとエーザイが販売していた商品だからです。ロヒプノールは中外製薬(元ロシュ)から販売を承継したものなので、もともとのエーザイの商品ではありません。エーザイも最初から同じものを2商標で売っていたわけではなくって、途中からそうなってしまったんです。しかも、ロヒプノールの名前の由来には「ロシュ」の名残があるのでそれが気に入らないのかもしれない。
名称由来
・サイレース:Silent(静か、鎮静)のace(達人)からサイレースと命名した。
・ロヒプノール:ROCHE の Hypnotic からロヒプノールと命名。
ということで、さよならロヒプノールなので処方される機会が増えるであろうサイレースについて調べてみようかな。
ロヒプノールとサイレースってどっちがよく処方されるの?
今回の件でもっとも腹ただしいのが「ロヒプノール」よりも売れていない「サイレース」を販売中止にしないでより影響が大きくなる「ロヒプノール」の方を中止したことです。
2015年の年間使用量をみてみる(院外処方のみ)
医薬品名 | 錠/年間 |
---|---|
ロヒプノール錠1 1mg | 53,843,460 |
フルニトラゼパム錠1mg「アメル」 | 52,847,204 |
フルニトラゼパム錠2mg「アメル」 | 38,357,465 |
ロヒプノール錠2 2mg | 32,905,436 |
サイレース錠1mg | 24,460,370 |
サイレース錠2mg | 14,905,638 |
厚生労働省「第2回NDBオープンデータ」を元に作成
使用量をみてみるとサイレースはロヒプノールの半分しか使われてないことがわかります。ジェネリック医薬品のフルニトラゼパム錠「アメル」にさえも負けてますね。
サイレース錠(ロヒプノール錠)について
中間作用型のベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。半減期20時間くらいあります。
用法及び用量
通常成人1回、フルニトラゼパムとして、0.5~2mgを就寝前又は手術前に経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減するが、高齢者には1回1mgまでとする。
たまに4㎎使ってるひとみるけど、原則2㎎までです。高齢者はより注意が必要なので1㎎までです。高齢者は腎機能が低下している場合があり作用時間が延長して体内に蓄積される量が多くなるリスクがあります。添付文書の高齢者の欄は、こんな感じ。
意識障害(頻度不明)
うとうと状態から昏睡等の意識障害があらわれることがあるので、注意すること。特に高齢者においてあらわれやすいので、慎重に投与すること。
ひどいと意識障害だけど、筋弛緩作用による転倒やフラつき、日中の眠気(もちこし)も多くなるので、とりあえず少ない量からスタートした方がいいです。高齢者に睡眠薬使うときはどれも同じような注意が必要で少ない量からためした方がいい。
ちなみに高齢者に使いやすいとされている睡眠薬は「エバミール」ね。
ロヒプノール・サイレースの半減期
半減期20時間の中間型睡眠薬です。睡眠時間が短い人で途中で起きてしまうからもうちょっと睡眠時間を延長したいという目的で使用される場合が多いです。
半減期が20時間とながいのでロヒプノールを24時間ごとにのんだら、体のなかから薬がなくなる前に、さらに服用することになるので徐々に体内に蓄積されていきます。
体の中にたくさん蓄積されてくと出て行く量も増えていきます。
やがて「体内に入ってくる薬の量」=「体から出ていく薬の量」になったところで血中濃度はあまり変動しなくなります。
この状態はを「定常状態」といいます。
「定常状態」になると1日の血中濃度があまり変動しません。となると、睡眠薬の効果が24時間日中も効いていることになります。なんともまぁ、不思議な状態ですよね。
この状態で睡眠すると、睡眠時間が延長してぐっすりと眠れるようになります。これがロヒプノールを飲む目的ですね。
問題は日中起きていられるかどうかです。
「定常状態」になると24時間でわずかな血中濃度の変動しか示さなくなる。でも日中おきていられるのは「脳には強力な覚醒機能」があって、十分な睡眠がとれたあとは、薬物影響下の睡眠に対しては、覚醒機構が活性化するので睡眠構造や日内リズムを保とうとして、朝は起きれるし、日中は眠くならない。
もちろん、量が多ければ別ですよ。日中眠くなります。
同じくらいの半減期の「ユーロジン錠」の添付文書記載を参照してみる。
作用機序
本剤の睡眠発現機序は、既存のベンゾジアゼピン系化合物と同様、大脳辺縁系及び視床下部における情動機構並びに視床下部-脳幹覚醒維持機構の抑制によると考えられている。なお、覚醒機構そのものには直接作用せず、麻酔状態にはいたらない。
ユーロジン錠(エスタゾラム錠):医薬品添付文書より
サイレース錠(フルニトラゼパム錠)には記載されていないんだけどユーロジン錠は親戚みたいなもの(ベンゾジアゼピン系の中間作用型)なので紹介しておきます。
「覚醒機構そのものには直接作用せず、麻酔状態にはいたらない。」って書いてありますよね。睡眠は延長するけど、覚醒には影響しないから日中は起きてられますよってことです。
ロヒプノール・サイレースの作用時間(持続時間)
中間作用型で半減期が約20時間と説明しました。半減期の4~5倍の時間を服用していると定常状態になります。定常状態になるまでは、徐々に体内に蓄積されていって「体内に入ってくる薬の量」=「体から出ていく薬の量」になったところで血中濃度はあまり変動しなくなります
半減期の4~5倍で「定常状態」なので、サイレースの場合は80~100時間ほど要します。
薬効がしっかりと現れるのは「定常状態」になってからなので、サイレースやロヒプノールがしっかりと薬効を示すまでには約4日かかります。
ちなみに、単回投与で血中濃度がMAXになるTMAXは約45分と意外と短い。ただ定常状態になるまで、繰り返し飲むことで血中濃度がたかくなるので、一回だけ服用して効かなかったというのではなくまずは1週間くらい試してから判断して欲しい。
初っ端から眠くなって服用中止する人もおおいんだけど、初日にしっかりと眠れてないと翌日の日中眠くなるのは当然なんです。初日からMAXの効果がでるわけではないのでもうすこし様子をみてほしい。徐々にならして行く意味で最初は1㎎がいいけど、そこは医者次第。
フルニトラゼパムが体内からなくなるまでの時間
体内にある薬物濃度が半分になる時間が半減期です。健常者なら半減期の4倍まてばほぼ体内からなくなります。
半減期の1倍 → 1/2(50%)
半減期の2倍 → 1/4(25%)
半減期の3倍 → 1/8(12.5%)
半減期の4倍 → 1/16(6.25%)
これは健常者の場合であって高齢者の場合は半減期がしばしば延長するので10倍くらい様子見たほうがいいとかなんとか。消失半減期の4倍で計算するとフルニトラゼパムの場合は体内から概ね消失するまでには80時間ほどかかります。
サイレースやロヒプノールとアルコール(酒)を一緒にのんでいいか?
睡眠薬のんで酒のんでいいですかってよく聞かれる質問です。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に共通で言えるのが酒(アルコール)との相互作用です。
サイレースの添付文書(併用注意)より
アルコール(飲酒)
中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。アルコールとの併用は避けることが望ましい。
アルコールと一緒に飲むと「サイレース」の効き目が強く出るので止めた方がいいですという説明ですね。
で、さらによく聞かれるのが「同時じゃなければいいんでしょ?」ですね。たしかにサイレースのTMAXは約0.75時間なのですが、普段からしっかり飲んでる人はTMAXに関係なく一定濃度が体内に残っている。上記の「定常状態」で説明しました。
だから「同時であるかどうか」はあまり意味ないのです。同時じゃなくてもアルコールのむと体内のフルニトラゼパムの採用作用は増強するので、眠気・ふらつきが起きやすくなります。もっとヒドイと意識障害とかね。
千鳥足になる可能性アップするのでやめときましょう。
ちなみにベンゾジアゼピン系の作用発言する順番ですが、
抗不安作用 → 抗痙攣作用 → 筋弛緩作用 → 鎮静睡眠作用 → 健忘作用
まず最初に抗不安作用が発言します。睡眠作用よりも筋弛緩作用の方が先に発言するので、アルコールのむと睡眠作用よりも先に筋弛緩作用によるフラつき・転倒などが起きやす行くなるので注意。
ちなみに体内からサイレースの成分がなくなるまでは80時間ほど必要なのも注意しておきたい。